
腹水の原因として、腹膜の炎症、血管内の浸透圧の崩れ、アルブミン不足などがあります。
この中の腹膜の炎症の原因は、お腹の中の臓器ががんになりそのがん細胞が腹膜に広がることで起こります。
ここではこのがん性腹膜炎と腹水の関係についてお話をしようと思います。
がん性腹膜炎から腹水になる原因
がん性腹膜炎は、腹腔内のがん細胞が手術などにより腹腔内に飛び散り腹膜にがんが転移することで起こります。
特に胃がんや大腸がん、婦人科がん、生殖器のがんなどが原因になります。
それ以外にも、リンパに転移したがん細胞が腹膜に小さな結節を作り、発症するとも言われています。
がん性腹膜炎になると腹水が溜まりやすくなりますが、その原因には主に3つが考えられます。
- 腹膜から体液が漏れる
- 血液中のアルブミン量の減少
- 水分の排出が悪くなる
がん性腹膜炎になると腹膜は弱ってきますので、炎症を起こしているところは膜の機能を果たせずに体液が漏れていくのです。
肝臓の機能が落ちてくると、血液中の水分量を調整するアルブミンが減り、血液中に水分を貯めておけなくなり、血管外に水分を排出してしまいます。
こうしてお腹の中に水が流出してしまうと、弱っている体や臓器は上手に水を吸収したり排出したりすることができずに、そのまま溜まってしまうのです。
がん性腹膜炎から腹水になった際の余命
がん性腹膜炎を起こしているということは、かなり体も臓器も弱っている状態です。
がん細胞が原発臓器の外にまで出て来ているということですし、リンパへの転移も見られている場合が多くなります。
それだけでもがんが進んでいるとわかると思いますが、腹水が溜まる状態はさらに病気が進行していると考えられます。
このような状態の時は、医師から余命告知をされることもあります。
余命についてはその際の進行度によりますが、深刻な場合、2~3週間と宣告される場合もあります。
それだけ深刻な状態であると言えるのです。
腹水貯留の治療法
がん性腹膜炎から腹水がたまった状態になると完全に治すことは厳しくなります。
お腹の中で広範囲に広がったがんをすべて取り除くことは不可能に近く、体力が極度に低下している体に、これ以上負担をかけられない場合が多いのです。
抗がん剤が効くタイプのがんであれば、抗がん剤治療をすることもあります。
抗がん剤の効果が期待できない場合は、残された時間を安楽に過ごせるように緩和ケアなどでサポートします。
がん性腹膜炎や腹水を治療するというよりは、出ている症状を緩和させるということです。
症状を緩和させるための対策
腹水が溜まると、食欲不振や呼吸困難、息切れなどの症状が現れます。
内臓が腹水により圧迫され、痛みが出る場合もあります。
これらの症状を緩和させるためには腹水を抜きます。
お腹に針を刺し、チューブをつなげて腹水を排出するのですが、ゆっくり抜かないと血圧が下がることがありますので、時間をかけて抜くことになります。
腹水には必要な栄養やたんぱく質も含まれており、それらも一緒に抜いてしまうことで体が弱ることが考えられます。
最近では抜いた腹水を特殊なフィルターに通して、必要な栄養やたんぱく質を再度体に戻すCARTを行う患者様も増えています。
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