
女性のがんの中で、最も多いと言われているのが、乳がんです。
女性の乳房には乳汁を作る「乳腺」という器官があり、ここでがん細胞が発生するのが乳がんです
乳がんの直接的な原因は他のがんと同じく遺伝子異常が蓄積されることですが、そのリスク要因は諸説あり、最も有力とされているリスク要因は女性ホルモンであるエストロゲンです。エストロゲンに長い間さらされることで、乳腺の細胞ががん化するリスクが高まることがわかってきています。
乳がんの病院での治療法
乳がんの治療法は、その進行度であるステージによって変わります。
非湿潤がんと言われ、その場所にとどまり他の場所に転移していないものを0期、湿潤がんと言われ、放っておくと増殖したがん細胞が血管やリンパ管を通って全身に転移していってしまうものがⅠ〜Ⅳ期です。
西洋医学的治療であれば、0期やⅠ〜Ⅲ期では、外科療法(手術)と放射線療法や免疫細胞療法、薬物療法などを併用して治療していきます。他の臓器への転移があるⅣ期ではがん細胞の切除が難しいため、薬物療法を中心とし、治療というよりはがん細胞との共存をはかることになります。
乳がんのステージ毎の生存率
国立がん研究センターのデータによりますと、乳がん女性の5年相対生存率は、
Ⅰ期…99.9%(症例数7029件)
Ⅱ期…95.4%(症例数6923件)
Ⅲ期…80.3%(症例数1710件)
Ⅳ期…33.0%(症例数699件)
となっています。5年相対生存率とは、あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、同じ性別、年齢の日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかを表します。(情報参照:国立がんセンター)
このデータからもわかるように、別の臓器に転移してしまうⅣ期では、生存率が大きく低下していることがわかります。
これは血管やリンパ管を通って骨、肺、脳などに転移していってしまい、例えば骨ならもろくなり骨折しやすくなる、肺ならせきや動悸息切れ、胸水が溜まってしまったり、脳の転移した部位によっては言語障害や麻痺などの症状が出る可能性があるからです。
乳がんの種類
乳がんは、大きく分けて転移のない非湿潤がん、転移のある湿潤がんの2つに分けられることを治療法の項目でお話しましたが、さらに湿潤がんは大きく3つのタイプに分けられます。
・乳頭線管がん…がん細胞がキノコ状に広がって育つタイプで、乳がん全体の20%を占めます。また、若年層に多いのも特徴ですが、リンパ節転移の確率は低く、予後は良好です。
・充実腺型がん…腺腔が不明瞭な小さな腺管の、乳管の中を広がっていくタイプで、乳がん全体の20%を占めます。このタイプのがんは、年齢に関わらず一定の割合で発症します。リンパ節転移の確率は中程度で、予後の悪性度も中程度とされています。
・硬がん…乳管の外側に砂を撒き散らすように発育するタイプで、乳がん全体の40%を占めます。リンパ節転移の確率も高く、この3つの中では最も悪性度が高いです。
また、これらに3つのタイプに属さない特殊型という湿潤がんもありますが、発生率はごく低いです。「粘液がん」「髄様がん」「浸潤小葉がん」「腺様嚢胞がん」「扁平上皮がん」「紡錘細胞がん」などがあります。
(情報参照 国立がんセンター)
乳がんの手術について
乳がんを手術によって取り除く場合、主流となっているのができるだけがんの部位そのものだけを切除し、乳房自体はそのままの形に残す「乳房部分切除術(乳房温存手術)」です。
しこりの大きさが直径3cmを超えていないこと、検査の際にがんが乳管の中を広がっていないことが確認できること、放射線が当てられること、他の組織に転移していないこと、と、条件はありますが該当していればこの手術を受けることができます。
術後、乳房の中に顕微鏡レベルのがんが残っていた場合のことを考え、放射線治療を併用します。
しこりの大きさが大きかったり、乳管の中を広がっている状態だと、胸の筋肉は残して乳房を全て切除する「乳房切除術」となります。がんの状態によっては、乳頭や乳輪は残せる場合もありますが、逆に、胸の筋肉や脇のリンパ節なども同時に切除しなくてはならないこともあります。
乳がんの漢方治療について
当クリニックでは、乳癌の治療として抗癌剤治療と並行して漢方薬での治療も推奨しております。抗癌剤治療では強い副作用が出ることが多い為、急速な体力低下を伴う場合があります。
身体の体力低下により、更に副作用が強く出ることがあり、そうなってしまうと悪循環です。その為、漢方薬で体力・生命エネルギーの回復を目指していきます。
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